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闇夜を灯すトーチ
アルバートのノート
招かざる客として、私は真夜中に「エンバーレスト」と呼ばれるシェルターに忍び込んだ。

ルインの上に立つこのシェルターには、最先端のルイン技術を駆使した複雑な装置があり、まさに「奇跡」そのものと言えよう。

人々から恐れられ、さげすまれ、追いやられたルイン感染者が、ここでトーチライトのハンターとなっていた。

破滅に瀕した世界にも、このような燃えたぎる希望があるというのだろうか。

トーチライト…君たちの向かう先にある結末を心から楽しみにしている。



ラグナロク
アルバートのノート
アンダリン山地で探検を続けていたところ、古代文字が刻まれた石板を数多く発見した。解読した内容は自分の予想を裏付けるものだった――このアンダリン山地は、怪力紀のラグナロクの古戦場だったのだ。

かつて、私の祖先はここでドラゴン族と決死の戦いを繰り広げ、最後に勝利を収めた。もう遠い昔のことのはずなのに、この土地に祖先の英魂の存在を感じている。

目を閉じ、谷間から吹き抜ける灼熱の風を体に感じながら、石板に記載された情景を想像してみた。

「あの日、天空の一族は乱舞するかの如く戦い、空は炎に焼かれ、巨神たちは流星の如く墜ちていった」
古の戦場
アルバートのノート
ドワーフたちはこの場所を古の戦場と呼ぶ……戦場の痕跡は数万年もの歳月によってことごとく消されてしまっているが。この地は祖先たちが大地で手にした最後の栄光、そして仲間同士の対立、裏切り、瓦解のすべてを見届けてきたそうだ。いずれにせよ、今ここには楽しそうなミニゴブリンたちが暮らしている。

古代のドワーフたちは戦争のために巨大な武器を製造した。今ではゴブリンたちが改造して家にしている。彼らの生活が改善されたのを見て、私はかつての暴力的な機械のために心から喜んでいる。山が切り開かれ、大地に穴があけられても、平和を願う気持ちはどんな力にも揺るぐことはない。このルインにまみれた戦争の時代では、こうした共通の信念が異なる種族を結び付けるのだ。

私はゴブリンの大祭司と一緒に、古い草で作った酒を飲んだ。これは彼らが遠方から来た客をもてなすための酒だ。私たちは夜遅くまで笑い、酒を飲み交わした。ルインがもたらした死の嵐は大地に広がっているが、私たちは今夜も明日の太陽のために下手な歌を歌うのだ。これこそがラプティス大陸に住む者たちのやり方なのだ。
裏切りへの呪い
アルバートのノート
今日、古代のドワーフ文字を解読していたら、とんだ笑い話を見つけてしまった。ゴブリンとラトリンが、実は呪いをかけられたドワーフだというんだ。ご先祖様も冗談好きだな。

創造主は世界を創った時にくしゃみをしたのだが、その勢いで飛び散った鼻水から生まれたのがゴブリン――これは史学者らが何度も論証したことで、不変の真理なのだ。しかし先祖によれば、ゴブリンは赫々たる名声を博したドワーフのヒーローだったが、ある馬鹿げた約束のために一族を離れ、しまいにはその裏切りが呪いを招き、一族すべてが醜く弱小なゴブリンになってしまったのだという。

ゴブリンが元々はドワーフだっただと?まったく過ぎた冗談だ。
トーチライト 誓いの言葉この夜、私は薪に火を起こし、手にトーチを取った。満天の星が見守るなか、私は自らの誓いを履行する――

かつての身分や栄誉、権利や利益などはもはや関係ない。無名の炎となり、仲間と一つになる。

我らは暗闇を切り裂く刃であり、闇夜を追いやる曙光。私はすべてを捧げ、夜の帳に輝く星となる。

私はトーチライト。自由と希望であり、永遠に諦めない光。この果てしない夜に私の名を響かせよう。

人生の最期を迎えるまで、己の志を果たすのみ。
ドラゴンウォール
アルバートのノート
古いシャベル21番、小さいシャベル22番と23番を犠牲にして、ようやくこの伝説の壁を登りきった。



私の両足がこの鉄の砦の上に立った時、魂に響くほどの震えや満足感があった。それは砦の下から見上げていた時のあらゆる時間をも凌駕していた。



私たちの祖先は万里の山壁に穴を穿ち、ドワーフ族が誇りとしている鉄筋を山々の中に持ち込み、これによって神のように強大で残虐な巨大竜に立ち向かった。



巨大な壁の淵に立った私は、遠くの雲に包まれたアンダリン山脈を眺めていた。耳元には機械の轟音、武器のぶつかり合う音、巨大竜の咆哮が聞こえるような気がした。



私はここにもっと留まり、この光景をできるだけ詳しく歴史の中に記録することにした。



そしてエンバー技術を用いた登山装置の購入に一部の予算を投じることを考えていた。

対ドラゴン兵器
アルバートのノート
初めて巨大な壁に立って対ドラゴン兵器を見た時、その巨大さと重さに驚嘆した。そして、それを使おうとした時、古文書に書かれた怪力紀のドワーフの身長に対して当然のように疑問を抱いた。

しかし、すぐに泥や砂利に埋もれた巨大メカが目に入った。

その瞬間、祖先たちが操縦するメカが巨大竜と戦いを繰り広げている場景が目に浮かぶような気がした。炎が空を覆い、金属がぶつかり合い、巨大竜が流れ星のような勢いで大地に落ち、絶え間ない咆哮が響き渡る。

私は進み続け、固定砲の下で歩みを止めた。

この数々の巨砲はまっすぐ空に向けられている。まさにかつて空を舞う巨大竜を撃ち落とすために作られた兵器なのだ。長いこと眠っていたとはいえ、その精密な機械構造は歳月を経ても風化してはいなかった。

ラグナロクが怪力紀の終焉だとすれば、ドラゴンウォールはその時代の最も重く、最も輝かしい象徴だと言えるだろう。



破れた日記「…

それでも、ルイン感染が人生の末路を意味するものではないと信じている」

さようなら、我が故郷。

私は遠くへ旅立ち、ルイン感染者が歩むべき道を探しに行く」



「先日拾ってきたあの女の子が今日の訓練を終え、いつものように何か待ち望んでいるような眼差しを私に向けた。

師に向けるような、姉に向けような、或いは母親に向けるような眼差しだった」

「彼女が私の口から何を聞きたいのか、私には分かっていたと思う。それでも私は何も言わなかった」

「感染者の命は短い。彼女には悲しみの種を背負わせたくはない」

「そう、オリエン先生が私たちの元から去った時のように」



「今日、私は古い友に出会った。幼い頃の遊び仲間、リーンだ。

彼の実力は計り知れないものだったが、クローになると言って聞かなかった。

…」



「…

もう私にその資格がなかったとしても。

でも、愛し合いたい。

私たちは決して屈することはないと、この終末を迎えた世界に証明してみせる」

不滅の甲冑
アルバートのノート
最近収集した古代文字にラグナロクに関する記録があり、祖先が戦に勝利したカギは「不滅の甲冑」にあったという。ヒーローが不滅の甲冑を身に着けると、体は山の如くたくましくなり、そのこぶしを振り下ろした場所は谷となり、その足が踏みしめた凹みは川となった。彼が降臨したその瞬間、戦と統治争いは終結した。

その「不滅の甲冑」がなんなのかは分からないが、それほど絶大な力を持つものの存在など、この目で確かめない限り信じることはできない。
地底のドワーフ
アルバートのノート
地底に閉じこもっているドワーフの傍系……まったくの予想外だった。この大きな一族、地上にいる私の同族とはまったく異なる科学技術。そう、彼らの科学技術はアンダリンで見た古代マシンの残骸とほぼ変わらないのだ。これらすべてがカズサエンス王に関する伝説を想起させた。

いや、違う。伝説というよりも、意図的に隠された歴史と言うべきだろう。しかし……すべてのドワーフにその歴史を直視する勇気があるわけではない。私たちが後世のために書き残す歴史書では、古代のドワーフの事跡が竜との戦いに勝利したところで急に終わることが多い。

しかし、その後に起こったことは誰もが知っている。マグヌス王はカズサエンス王を諌めようとして軟禁されてしまった。しかし、彼は獄中で山脈の中心部に通じる秘密の通路を掘り、誰にも見つかることなく、スパークを盗み出したのだ。マグヌス王がスパークを隠し持って地上へ逃げた時、彼の背後の坑道はスパークを失って暗くなっていき、反対に前方の闇夜がスパークに照らされ明るくなったという。その光に導かれるように、数百人の民がマグヌス王と共に地下を後にした。彼らこそが地上ドワーフの祖先だ。
割れた名札の文字雑物の山から見つけたのは、ボロボロになったネームプレートだった。そこに書かれていた名前はクイン。
ドワーフ親方の日記「11月5日、約束の賃金は支払われず、休みも半分に減らされ、現場の労働者が怠けたせいで遅れた工期もすべて私のせいにされるのだ」

「11月7日、労働者たちの不満が高まっているが、私にもどうしようもない。今朝、採掘した結晶の数が足りないとの理由で、隣のクイン親方がカズサエンスの心に連れていかれてしまった。いつ戻って来るかも分からない。私はああなりたくない。」
監視隊の日記今日、ドゥガル陛下に召集され、正式に監視隊の一員となった。私は自分の務めを忠実に果たし、陛下のために臣民の秩序を正す。最初に正すべきは怠け者のポールだ。あいつは昨日も仕事中にこっそり石集めをしていたので、親切に注意してやった。そしたら、うるさいと言われてしまった。まったく、ドゥガル陛下の偉業のためだと言うのに!

しかし、陛下に謁見した時、そばに立っていた黒ずくめの奴がどうも気に食わなかった。きっと地上からやって来た奴に違いない。あいつが陛下のそばに立って、しかも陛下と言葉を交わすなんて!自分も陛下と話ができるようになる日が来たらどんなにいいか。
ドワーフ王
アルバートのノート
私はドワーフ王に拝謁する群集に紛れ込んだ。若い国王は志高く、誰もが彼を敬愛していた。

しかし、彼の目は節穴だ。つまり、彼は古代ドワーフの栄光とスパークによる光に目がくらみ、自分の周りで何が起こっているのか分からなくなっているのだ。彼はドワーフ王国の未来のことばかりを口にするが、現在のドワーフ王国を消耗させている。

祖先がこの世に残した最後の文字を読み終えたところで、この旅もそろそろ終わりに近づいてきた。怪力紀の歴史については、ほぼその顛末を把握できたし、近い将来、そのすべてを歴史に刻もうと思う。

祖先が残した文字は、既に今の言葉に翻訳してある。好みでレトリックも加えてはいるが、内容は変わらない。祖先が残した文字を自分の旅行記に記録し、いつか誰かに見つけてもらいたいと願う。ヒーローの犠牲は、世界に銘記されなければならないのだから。
我が子孫へ我が子孫へ:

我々は長い間、巨大竜に支配されてきたが、その残虐な統治をようやく覆すことができた。この無双の勝利によって、ドワーフの文明は歴史に刻まれることになった。

しかし我が兄弟、即ちその時代の偉大なる君王は、原始の火がもたらす力に惑わされていった。彼は我々がなぜ覇権に立ち向かったのか、巨大竜にどれほど虐げられてきたのかを忘れてしまったのだ。今や彼は世界の中心に立つ存在でありながら栄誉と欲望に溺れ、それは私が何よりも目にしたくなかった姿だった――ドラゴンを倒した驕り高い国王は、ついには悪竜となってしまったのだ。

彼はドワーフは勝利の果実を独り占めし、原始の火を永遠に地底に留めるべきだと主張したが、既に十分な繁栄を遂げたドワーフ以上に、地上に生きる種族や生き物がそれを必要としていた。さもなければ、彼らの文明は暗闇に完全に呑み込まれてしまう。

だからこそ、私は彼らのために立ち上がった。それが一族への裏切りになろうが、永遠の汚名を着せられようが構わない。私は追随してくれる数百人の勇士と共に原始の火を盗み、当然の如く国王の逆鱗に触れた。彼は我々を永遠に故郷から閉め出し、悪辣な呪いまでかけたのだ――我々から生まれてくる子供たちは一人残らず醜い容姿の腰抜けになるのだと。

最初は気にもしていなかったが、妻が奇形の子を産み落とすと、呪いが本物であることを初めて悟った。私についてきてくれた数百人の親族も例外なく、子孫はみな醜い姿をしていた。故郷に戻れず、血筋も残すことができない、それが裏切りの代償だった。

これらの文字を私の子孫が読めるかどうか分からないが、子孫の未来に対してはとてもすまなく思っている。だが自分のしたすべての事に後悔はしていない。原始の火は元の場所に戻され、万物がその輝きの恩恵を受け、今や独裁も虐げも存在せず、世界はまったく新しい時代に入った。

我が子孫よ、もしこの文字が読めるのなら、どうか雪辱してほしい。我々は裏切り者ではない。

我々の犠牲と引き換えに、世界は万世の繁栄を手に入れることができたのだ。

ジューダス・マグヌス
契約トーチライトのハンターとクローは固い絆で結ばれている。

ハンターと契約を結ぶと、クローは自身の体でハンターの体内のルインを一部負担し、ハンターが完全にルイン化してしまうのを防ぐ。

契約の儀式は極めて危険であり、強靱な精神力を持ったクローでなければ耐え切ることはできない。



偽りのサンクタム
アルバートのノート
教会のシェルターにやって来た。誰もがなんとしてでも入りたがる光明のサンクタムだ。

高額な寄付金、厳格な教義、複雑な掟。

檻に囲われた家畜どもが、カネで創り上げた「平和」に溺れている。

見せかけの光明は決して長く続くことはない。
アントニオの研究日誌8月31日 晴れ

今日は教会を出て、ドーンサンクタムにやって来た1日目だ。

昔の仲間には「老人ボケ」と笑われたが、聞き流していた。

3日前、執筆した『エンバーパーツを利用した失格者治療の実行可能性分析』が、またもや副主教のキーガンに突き返された。彼は職責を尽くしてないと私を叱責したばかりか、「失格者を利用して教会に危害を加えている」などの一連の罪を私に着せたのだ。

あぁ、大主教が重い病に罹っていなければ、キーガンもここまで狂気じみた真似はしなかっただろう。

誰も肩入れしてくれなかった…あのロメルという聖戒騎士を除いて。

彼は子供のころに大主教に引き取られ、厚い期待を背負った聖戒騎士の未来のリーダーだ。

結局、ロメルが懸命に取り持ってくれたおかげで私は追放されずに済み、このドーンサンクタムに飛ばされてきた。

哀れなほど少ない持ち物を取り出し、カビ臭さを取ろうと広げていた時、ドーンサンクタムにロメルがやって来た。彼も同じ考えなのだと至極真面目な態度で話してくれた――トーチライトは少数の人だけに照らされるものではなく、失格者にも救済される権利が同じくあるのだと。

実のところ、ロメルは私が教会で会った数少ない正義の人だ。

今後、私はこのドーンサンクタムに留まり、失格者を救う道を探し続ける。


9月2日 曇りのち暴雨

研究は遅々として進まず、私は老後のためのなけなしのカネを持って、暗いうちにこっそりとビリーバーアレイにやって来た。

私と落ち合ったのは若い失格者の少女で、彼女は高い塀の上からバイクに跨がったまま飛び下りた。この老いぼれた心臓が一瞬止まるかと思ったが、バイクは静かに私の前でぴたりと止まった。

私の依頼――一番安いエンバーパーツを頼むと、彼女はなぜか大笑いしたので少々腹が立った。だが彼女はすぐに真顔に戻り、私の大切なカネが入った巾着袋を受け取って中身を確認すると、また投げてよこした。

「それはまた今度!」

彼女はそう言い残すと、バイクに跨がり夜の帳へと消えていった。

私はその場に呆然と立ち尽くし、後から降ってきた大雨で全身びしょ濡れになってしまった。


9月3日 晴れ

雨漏りで濡れた布団を干していた時、あの失格者の少女が屋上から飛び降りてきて、堂々とした足取りで私の前までやって来た。

突然の登場にまたもや驚かされた私は、急いで彼女を家の後ろまで連れて行った。

「じいさん、エンバーパーツだ!」声は落としていたが、喜びが聞いて取れる。

彼女はいっぱいに詰まった袋を投げてよこし、私は震える手で袋を開いた。中には様々なエンバーパーツが入っており、古いものもあれば斬新なものもあった。高鳴る鼓動を抑え、私は平静を装って中から一番古いものを手に取った――教会のカネにまみれた奴らとは違い、私には豪勢に振る舞えるカネがないのだ。

巾着袋から大切な金貨を取り出して数えていると、少女は楽しそうに口笛を鳴らし、身を翻して塀の上に跳び乗り、白いレンガの間に消えていった。


9月6日 晴れ

数日間の研究を経て、エンバーパーツの作用原理を完全に把握した。

薄いエンバーの結晶片に決まった模様を刻み込めば、なんの変哲もないエンバーが「エンバーパーツ」となるのだ。エンバーパーツは失格者の体内にあるルインの力を刺激し、パーツに注ぎ込まれたその力は模様を伝って拡大し、最後には目を見張る「技」となる。

私は「ファイヤーボール」という模様を刻み、手のひらにのせてみた――熱を少々感じた以外は、これといった変化はなかった。

私は模様を改良して新しいエンバーパーツを作ってみた。

これらのエンバーパーツにいずれ真の主が見つかることを願う。
地に墜ちた王朝
アルバートのノート
帝国はもうおしまいだ。それもそのはず、アミニウスが卑劣な手段でヘルマン一族を追放したあの時から、いずれこの日が来ると予想していた。
今、教会は帝都の無惨な屍の上に統治体制を築き、自らを光明であるとまで高言している。
その恥知らずの程度といったら、教会も帝国もどちらも引けを取らない。
傲岸なる聖堂
アルバートのノート
私は教会に潜入した。教会がその祖先から受け継いだという光明の魔法が、数千年後の歳月を経た今、どんなものになっているのかを確かめるためだった。

彼らは最も低級のヒーリング魔術で信者を惑わし、最も上級のバリア魔法でスパーク聖殿に通じる扉を封鎖していた。

それは私を徹底的に失望させた。
サントランの教義本巻はサントラン教会の教義である。教会のすべての者は、これを最高の行動基準として扱うべきである。

一.教会クレリックは日の出と共に祈り、日の入りと共に休まなければならない。

クレリック全員は日の出前に教会の玄関広間に集合して階級別に並び、これを粛々と行うこと。

教会入り口の7段目の階段に日が差し込んだ時、大主教が祈りの開始を告げる。この時、クレリック全員は目を閉じて恭しく立ち、手を合わせる。

神父二人が主祷文を唱え、これに合わせクレリックは小声で随唱する。

祈祷終了後、クレリックらは順番に自らの場所に戻る。

日の入り後、全クレリックは教会を速やかに出て自宅に戻り、時間外に教会に留まってはならない。


二.教会員が外出する時には書面による申請を行い、自主的にルイン検査を受けること。

原則的に教会員の外出は認めない。

特別な理由で外出しなければならない場合は、教会執事に外出申請を書面で提出し、副主教の審査を経て外出通行証を受け取ること。

教会に戻る時はルインをサントランに持ち込まないよう、自主的にルイン検査を受けること。


三.サントランに忍び込んだ流民を積極的に検挙すること。

サントランへの入居には厳しい審査が行われるほか、サントランに入る関係者以外のすべての者を侵入者として見なす。

教会員は侵入者との正面衝突を避け、教会執事またはクルセイダーに状況を速やかに伝え、侵入者への対処を任せること。

四.クルセイダーは厳しく己を律し、サントラン教義を遵守すること。

クルセイダーは大主教ディリックの命令にのみ従い、祈祷などの活動を免ずる。

クルセイダーは教会クレリックを守る義務、教都住民を守る義務、侵入者を駆逐する義務を負うこと。

クルセイダーは毎日少なくとも二回の巡邏を行うこと。
スパーク再び
アルバートのノート
やっとのことで教会がスパークを保管している聖殿に忍び込んだ。

スパークは前回見た時よりも輝きを失っていた。教会はこれを使って何をしているというのだろう。

スパークがあんな奴らの手に落ちるなんて、我慢がならない。
原始の火の行く末
アルバートのノート
この大陸を何年も旅しているが、原始の火とスパークの研究を怠ったことはない。

歴史上のどの時代においても原始の火の存在があり、それは暗闇を照らすトーチライトのように、人々に進む方向を指し示してきた。しかし今、そのトーチライトが消えてしまったのだ。原始の火は異界からやって来た邪神の攻撃を受けて4つのスパークに砕け、各地に散らばってしまった。

砕けたスパークの力は著しく弱まってしまったが、限られたエリア内のルインを消散させるだけの力は持っていた。教会はまさにその力を利用して乱世に平安な地を築き、信者を集めてはカネをまきあげていた。あのクレリックらの驕りぶった顔を想像するだけで、俺のこの魅力的な赤ヒゲまで怒りで震えてしまう……くそったれどもめ!くそピエロどもめ!腰抜け野郎どもめ!

実は教会のほかに「トーチライト」という新しい組織があり、彼らもスパークを秘密裏に守っている。奴らのほとんどが哀れな失格者だが、自分たちなりの方法でこの憎き世界に対抗している。実際、奴らには感服している。ネザリムに立ち向かおうとしている時点で、教会よりずっと強いのだからな。

スパークを囲んだ教会のピエロどもの滑稽な様子を想像するたびに、ある強烈な思いが湧いてくる――いつの日か、トーチライトに教会のスパークを奪ってほしいとね。
インペリアルシティ居住者ルール一.日没後に外出してはならない。

二.毎月決まった時間に寄付金を納め、これを滞納してはならない。

三.祈祷会に週二回以上参加しなければならない。

四.サントランを勝手に離れてはならない。

五.クレリックとクルセイダーの作業の邪魔をしてはならない。

六.よそ者のサントラン進入に手を貸してはならず、違反者は即追放される。

七.ルイン、失格者、帝国を口にしてはならい。教会の一切の決定に疑念を持ってはならない。
モンスターの秘密アンドリックへ

アンドリック!あのモンスターをまた見かけたんだ!見間違いじゃない!今度こそは信じてほしい!

昨晩、居眠りしているクルセイダーをよけて路地の奥にやって来たら、またあの細長い影を見たんだ。青白い体をしていて、頭は大きなスイカのようにむくんでいた。両足は骨抜きされたように地べたにへたり込んでいたけど、首と胸からは何本もの手が伸びていたんだ!

すぐに木の後ろに隠れたけれど、恐ろしさで体が固まってしまったよ。モンスターは手を支えにしながら花壇を這い、ミリーの家の窓のところで立ち上がったんだ!青白い無数の手がミリーの家の窓枠をつかみ、顔を窓ガラスにへばりつかせていた。恐ろしい光景だったよ!

クルセイダーに助けを求めようと思った時、奴は窓枠から手を放し、手で地面を掘ってあっという間に姿を消してしまった。ミリーの家に侵入しなくて本当によかったよ。

アンドリック、今晩一緒に行こう!クルセイダーには絶対に見つからないから!一緒にビリーバーアレイに行ってモンスターの秘密を探ろうよ!
敬虔者の路地
アルバートのノート
ここは教会の「慈悲」の傑作――保護を求める人々に提供された場所だ。

フッ、もちろんその「慈悲」が何を意味しているのかは分かっている。教都に住みたければ「寄付金」の名義で10万帝国金貨を一括で納めなければならない。これとは別に生活費として毎月2000帝国金貨も要求される。

教会側はその見返りとして24時間体制で警邏するクルセイダーと強固な防御装置により、この上ない安全な生活環境を提供しているというわけだ。冒険精神に則り、試しにその装置に触れてみた。すると強烈な光明魔法が全身を突き抜けるではないか。「高濃度エンバー駆動による絶対防御装置なのに携帯に便利なメカ装甲」を身に付けていなければ、骨まで砕けていただろう。

こんな所に住もうと考えるのは、頭のいかれた奴ぐらいだ!と吐き捨てながら退散しようとしたその時、”カチッ”という音がした。足元に視線を落とすと、なんだ、警報器じゃないか。

言うが早いか、グレーの服をまとったクレリック5人が違う方向から現れ、手に持った鋭いナイフを俺様の肥えた腹に突き刺してきた。

だが、俺は「高濃度エンバー駆動による絶対防御装置なのに携帯に便利なメカ装甲」を身に付けている。奴らがどんなに突き刺そうと、俺はびくともしない。だが高濃度エンバーは極めて高価なものだし、やはりその場から速やかに立ち去ることにした。

まったくクソみたいな所だ!
城壁の守衛の手紙親愛なるアンナ

マークとメリーを連れてサントランを離れることにしたよ。

知れば知るほど、ここは想像していたほど素晴らしい場所ではなかったことに気付くんだ。味気ない毎日が繰り返されるだけで、マークとメリーの笑顔だけが唯一の救いだった。

でも2人も決して幸せだとは感じていないはずだ。

一日の始まりに一日の終わりが見えてしまう日々に、喜びなんてあると言えるだろうか。

ルインが爆発した時、どんなにそれを怖れたことか。ルインに感染することを恐れ、ルインから這い出すネザリムを怖れ、そしてすべて失ってしまうことを怖れた。

君がルインに感染した時、僕は君からすぐにでも逃げだそうとした。僕は嘘つきで腰抜けで、救いようのないふぬけ野郎だ。

アンナ、手紙は全部受け取ったよ。ルイン感染者の暮らしを教えてくれてありがとう。そして遙か遠くにトーチライトという組織があり、ルインやネザリムと戦っていることも。

アンナ、僕はもうルインを怖れない。教会にはもう申請は出してある。君に許してもらえなくても、僕たちは3日後にここを離れるよ。

マークとメリーが再びママと会えることを願っている。

ラントス
嘆きの壁
アルバートのノート
おかしな話だが、教会がこの重厚なものものしい城壁を築いたのは、ルインを防ぐためではない。

光明と救済を求めてやってくる平民を、壁の向こうに隔てるための城壁なのだ。

それでも教会が提供する安価な救済は受けることはできる。それと引き換えるための十分なカネが持っていることが前提だが。
光明魔法の装置
アルバートのノート
教会の城壁に3日間潜伏し、ようやく光明魔法の装置のからくりを把握した。

教会の様々ある魔法装置はおよそ3種類に分けられる――攻撃型、阻害型、伝送型。つまり「触れるとすぐ攻撃するタイプ」、「面倒な通せんぼタイプ」そして「助っ人を呼ぶタイプ」だ。私が収集した文献には、光明魔法は治癒、浄化、保護の働きをするものが多かった。だが今の有り様には、教会への罵倒をおかずに飯を何杯も食ってしまったぐらいだ。

実はもう一つ厄介なことがある。高所恐怖症を克服し、「超軽量型圧縮式エンバー飛行装置」で城壁を後にしようとした時、城壁の装置が突然飛び出し、空中にいた俺に向かって光明魔法弾を放ったのだ!美しく鍛え上げた体が城壁に打ち付けられ、その後のことは覚えていない…
罪の裏側
アルバートのノート
今日ほど怒りが込み上げたことはない。

先生はかつてこう言っていた。私たちはただ歴史を記録する者なのだと。歴史を発掘し、歴史を見つめ、長い歳月の流れに埋もれてしまわないよう、各々の方法で歴史を刻んでいく。しかし同時に、私たちは永遠の傍観者――冷ややかで無言の傍観者なのだ。歴史をでっち上げることも、これから歴史となろう事物を変えることもできない。

だが、私は彼のような、すべてを冷ややかに傍観する、最高の忠誠心を持った信者にはなれなかった。

城壁外のロストシティに住む者たちが、教会の高い壁の下に群れ集まった哀れな人々であることを私は資料で読んでいた。高い寄付金が払えず、廃れた巷に集まり、教会の救済を待ち望んでいるのだ。

ここに来てからは、貧しい平民ばかりでなく、巨大な悪党組織――ウルブズの存在も知った。彼らのほとんどは旧帝国時代の兵士で、高い武装能力を備え、平民に躊躇なく銃口を向けるような奴らだった。

貧乏人から「みかじめ」を巻き上げるなど、もはや最低の行為だと思っていたが、その後目にした光景は私の想像を遙かに超えるものだった。

あの夜、私は建物の陰に隠れ、その一部始終を目撃したのだ。ウルブズの2人が数十人の平民を連れ、人目につかない路地に入っていき、そして城壁下の隠しドアへと消えていった。連れて行かれる人たちの顔には敬虔な気持ちと感謝、熱い期待が見て取れ、切望していた救済を今にも手にするかのようだった。

ウルブズが彼らに何を吹き込んだかは知らないが、すべてが嘘に違いない。私は見たのだ、奴らの商品リストを――平民一人500帝国金貨。

奴らを止め、彼らを助けたい――そう思ったが、私には何もできなかった。

サントランに戻らねば。あの空っぽの修道院には、まだ明らかにされていない何かが隠されているはずだ。
ウルブズ入会契約契約番号:QL-110227-113

ロストシティの治安を守り、ダッジ将軍によるウルブズアレイの指揮方針を徹底させるため、研究を重ね、思慮を尽くし、以下の通り協定を締結する。

1. 義務と責任
双方はライニがウルブズへ参加し、相応の職責を果たすことに同意する。

2. 期限
本契約発効時からウルブズの一員となる。ウルブズは職責を履行できないメンバーを除籍することができ、ウルブズのメンバーは如何なる理由があろうとも自らウルブズを離脱してはならない。

3. 労働日と労働時間
3-1 定期的に交替で休暇を組む。
3-2 労働日は常に呼び出しに応じなければならない。
3-3 実際の労働において3-2の優先度は3-1より高い。

4. 報酬
ウルブズの保護を受けることができ、武器、食事、宿泊場所が与えられる。基本給はなく、収入は月末の利益配当となる。利益配当の割合は当月徴収した用心棒料で決定される。

5. 差引費用
5-1 武器の賃借料。武器の賃借期間中は自費で武器の維持管理を行うこと。武器が損壊した場合は、当初の買入価格を賠償金とし、以降の賃借料を50%引き上げる。
5-2 毎月時間通りに会費を納めること。期限を超えた場合は延滞料として会費の50%を支払わなければならない。延滞が3回目となった時点で個人の全財産は没収され、除籍されるものとする。

6. 契約の中止
詳細は第2条を参照のこと。

注意事項:本契約への署名をもって本契約のすべての条項、及びそれによりもたらされる結果について理解したものとし、本契約を紙本により作成し、本契約の制約を受けることに同意するものとする。最終解釈権はダッジ将軍に属するものとする。

契約地及び履行地:ウルブズアレイ

甲:ウルブズアレイ人事部

乙:ライニ
隊長宛ての手紙デブで愚かなオーセン元隊長へ:

お陰様で今の私の気分は最高だ。

あなたに強いられてシルバーフレイムに潜入した当初は、本当に意気消沈したものだったが、そのうちここが楽園だということに気付いたんだ。

私は初めて知った――人々に威圧的に振る舞わなくてもいいことも、自分より地位の高い人にこびる必要もないことも。そして冷たい缶詰ではなく、湯気の立つ温かい食事を初めて食べ、あるお年寄りの屋根を修理してあげた時には、彼が嬉しそうに笑って新鮮なニンジンを分けてくれた…

ウルブズにいた頃は、恐怖に支配されていた。夜に怯え、任務に怯え、あなたの叱責に怯え、取り立て先の反抗に怯えていた。だが、今は何も怖れるものはない。

もちろん、私が誰であるかなど覚えてないだろう。あなたが遣わした十数人の潜入員のうちの、取るに足らない1人なのだから。

それでもあなたに言ってやりたい!私の肉体と魂は、もうあの汚らわしいウルブズから完全に解放されたとね!今の私にしてみれば、あなたは頭の中をヘドロで満たしたろくでなしであり、ちょうちん持ちの畜生どもを率いた、肥だめの中で転がり続けるブタでしかない!

あばよ、ウルブズ!

匿名希望の、あなたに一刻も早くくたばって欲しいと切に願うシルバーフレイム所属メンバー
行方不明者統計今月の行方不明者リストを整理した結果、先月より若干減少した。

ウォーレン、男性、45歳。シルバーフレイムアレー47番地。

ウェイン、男性、24歳。シルバーフレイムアレー981番地。

ベラ、女性、25歳。シルバーフレイムアレー981番地。

デクラン、男性、28歳。シルバーフレイムアレー189番地。

オルガ、女性、61歳。シルバーフレイムアレー19番地。



住民の一連の行方不明事件にウルブズが深く関わっていると思われるが、今のところ決定的な手がかりはない。
泥まみれの日記昨日、残った家具を売り払ったが、ミリーとエルザが来月納めなければならない寄付金には足りなかった。

この数か月、どんどん引き上げられていく寄付金が、巨大な重しのようにのしかかってくる。父が残した財産もほとんど処分し、想い出となる品すら手元に残っていない。

カネが必要だ。うんとたくさんのカネが必要なんだ。

カネさえあれば、家族みんながサントランで暮らせるようになる。聖なる光の下で、あのおぞましいルインを遠ざけることができるんだ。

3日前、ウルブズのボス――ダッジにひと稼ぎしないかと持ちかけられた。

平民20人を教会に潜入させれば、50万帝国金貨を支払ってくれるというのだ。

本音を言えば、ダッジとは関わりたくはない。しかし足元を見透かすかのように、彼は金貨がいっぱいに入ったアタッシュケースを部下に開けさせた。そのまばゆさは私の目を突き刺すほどだった。

行動に移す時が来たんだ。夫として、父親として……。
副主教キーガンの手紙愛しい弟よ、もう君はいなくなってしまったが、どうか許して欲しい。

この世界の未来のためなら、聖霊は必要な犠牲も許してくれる。

そう固く信じ、自分の周りの人から実践することにしたのだ。

孤独な聖霊には、そばにいてくれる人が必要だ。私が大主教となり聖域に達した暁には、君の努力と犠牲を必ず聖霊に伝える。

その時には、海の向こうに広がる風景は苦しみ満ちたものではなくなり、人々に永遠に開かれたものになるであろう。
スパークの実験記録「スパークの実験は聖域に通じる唯一の階段であり、私は聖霊の祝福を受け、まったく新しい世界への扉を開くのだ…」

「教会の実験は一つとして成功したことがない。これほどまでの変化に人類は堪えられないのかもしれない…」

「なんと!ある被験体が生き残った!彼女が目を覚ましたら、何が起こったのかを徹底的に調べなければ…」

「なに!?あの被験体が逃げ出して行方が分からないだと?彼女の力はあまりにも強大すぎる…やはりそうだったのだ!スパークの実験は正しかった。そして続けていかなければならない偉業なのだ!」
流れ星のように輝く火山ガラス黒い石が不思議な光を放っており、ルーペで確認すると穴が見えたので、火山ガラスだろうとほぼ断定できた。しかし、この石がここにあっても実用性はない。ただの装飾品として使うためだとしたら、小さなイチ族はどうして砂漠の外からわざわざ運んできたのだろうか?

しかも、火山ガラスが自然に形成されるには、溶岩と氷や水の相互作用が必要になる。この砂漠は見た目ほど古くはなく、人を千里の外に遠ざけるほどの危険性が、いにしえの秘密を覆い隠していただけなのだろうか?そのことも世界最後のドラゴンがここを住みかとして選んだ理由なのだろうか?
ウィルがジェルソミナに捧げた873通目のラブレター親愛なるジェルソミナへ

私の熱き夜の夢。この手紙を読んでくれて嬉しいです。

君を夏の日にたとえようか…思わずこの素敵な詩を引用してしまったことを許してください。この詩を読んで、初めてあなたにお会いした時のことを思い出してしまいました。あれは私がスターフォール市場に到着したばかりのことでした。果てしない夜の闇が広がる中、ここの石の中に星のような光を放つものがあったのです。あなたの尻尾が私の鼻先をくすぐった瞬間、私の胸に熱い血がたぎった…そして、いくつもの想いが頭の中でぶつかり合ったのです。それらは競い合うかのように大きくなり、微笑みやあなたを慕う気持ちへと姿を変え、私がこの便箋に文字を走らせるよう駆り立てているのです…

敬具

ウィル
サンドライト工事の入札書【入札書】サンドライトプロジェクトに関するシンシアフレンドエンジニアリングの入札書

プロジェクト名:ラクーマ地区サンドライト工事

入札者:シャーロック

1. 入札書:

投資によって合法的にイチ市民の身分を取得した以上、自分の国のためにさらなる貢献をさせていただきたく存じます。入札工事プロジェクトの募集書類にもとづき、関連規定を遵守し、プロジェクト用地の実地調査および上記募集書類、その他の関連資料を検討した結果、当社は契約条項、施工基準、施工数表の条件にしたがい、上記工事の施工および竣工を請け負い、あらゆる品質不良の修理責任を負うことを希望します。

当社が落札した場合、入札説明書に規定されている工期5年以内にすべての工事を完了させ、引き渡すことを保証します。

2. 施工体制の計画:

サンドライト工事は最も遠い場所で砂漠の周縁部での工事となり、これはどの会社にもできないと思います。また、環境主義者の脆弱な感情、マザーリバーが汚されることを決して認めない保護主義者の強い意志に配慮し、当社は街灯柱およびケーブルをパルタタル川地域に設置しないようにします。しかし、それでは上述の民衆に、獅子心王の英断に対抗して勝利した証と思われてしまいます。検討した結果、当社は対外的に、パルタタル川地域の複雑な地下水脈と流砂性土壌のために施工不可能であると発表することにします。
『静かなるパルタタル』抜粋パルタタル川は自然の川ではなく、古代イチの王がここで神の啓示を受けて開削させた川だ。この工事によって無数の労働者が命を落とし、民の間には不満が広がった。千年後、やまぬフェーンがラクーマの古城の肥沃な大地を砂漠に変えた。意外にもこの川は古代イチの生存者にとって最後のオアシスになった…そして後のイチ族に生きるためのマザーリバーと呼ばれるようになった。当時犠牲になった労働者の嘆きは、今も蒸気の中に漂い続け、極夜でも安らかな眠りにつけていないそうだ。
エスの木彫り猫雑な顔がことさら滑稽に見える。猫のお腹には几帳面な文字で「愛する我が娘エスへ」と刻まれている。作った人はとても心を込めていたようだが、工芸の才能はなかったようだ。
飛行船の墓場
アルバートのノート
「世界最後のドラゴンの住みかを探すため、私はラクーマ砂漠にやって来た。砂漠の奥には猫のような習性を持つイチ族が暮らしているらしい。その古き部族は『極夜の呪い』のようなものを背負っている。その呪いによって、彼らは外部の人間に暮らしを邪魔されることなく、長きにわたって砂漠の中に閉じこもっている。これまで、この場所でコンパスが狂うのは、不思議な磁場があるからではないかと疑いを抱く程度でしかなかった。しかし、闇夜の大地に広がる飛行機の残骸を目の当たりにした私は、ついに確信した――さっきの墜落は私の操縦免許失効のせいではなかったのだ!」
獅子心王の勅諭
市場封鎖令
賊の首領が逃亡中のため、スターフォール市場から外へつながる道を封鎖する。途中のサンドライトを破壊してでも、反乱軍の逃亡を食い止めなければならない。
書きかけの無記名の手紙親愛なるエスへ

ファーストネームで呼ぶことをお許しください。恐らくこのように呼ぶのはこれが最後になると思いますから。あなたがこの手紙を読んでいるということは、私は仲間の戦士たちと共に命を落としていることでしょう。王国軍がスターフォール市場を包囲しました。私たちは最後の瞬間まで戦います…どうかご無事で。決してご自分を責めないでください。私たちは戦争で死ぬのではなく、イブニングスターの理想のために殉じるのです――暁光が広めたすべてを、いずれイブニングスターが取り戻すでしょう。最後に1つお願いがあります。私の母に会うことがあれば、代わりに伝えていただけないでしょうか…
獅子心王の勅諭
スターフォール市場を一掃する
市場での取引はすべて一時停止とする。勝手に取引をした者は財産をすべて没収し、砂漠の辺境に追放する。反乱軍と共謀した者は、檻に入れてさらし者にし、反乱軍と同罪に処する。たとえ冤罪であっても、決して容赦はしない。
砂漠の中の大河
アルバートのノート
「パルタタル川は川底の小石もろとも押し流すように勢いよく流れ、昔日に未練すら残さなかった。古代イチ族は川の上流に暮らし、記憶と歴史から抹消された砂漠の物語を守り続けていたという。ついでに言うと、この先の道はものすごい勢いで建設が行われ、どこもかしこもケーブルばかり。ここで自然の砂漠を目にできて、とても嬉しい。人の手による開発の痕跡ばかりになったら、ドラゴンのような古代生物はどこで暮らせばいいのだろうか?」
ウィルがジェルソミナに捧げた913通目のラブレター親愛なるジェルソミナへ

、君は私という荒れ果てた土地に咲く最後のバラ。この手紙を読んでくれて嬉しいです。

スターフォール市場で別れてから私は砂漠の果てをさすらったが、どこにもあなたの姿はなかった。哀れな男に慈悲を与え、あなたが無事であることを教えてください…スターフォール市場のいつもの場所で会えることを楽しみにしています。

敬具。ウィルより。
風を遮る火山岩
アルバートのノート
…ここの岩の配置は明らかに人の手によるものだ。特定の時期にこの地域で発生する突風を防ぐために使われているようだ。そして、これらの岩の間隙構造、硬い質感、高温耐性、風化に強く摩耗しないといった特徴からして、高温のマグマが火口から噴出した後、地表で冷え固まってできて火山岩であると考えられる。

スターフォール市場の火山ガラスを思い出した。火山岩の突然の出現が遮風といった単純なものでなければ…思わず大胆な考えが浮かんだ。これらの古い岩は砂漠が生まれるよりも前からここに存在していたのではないだろうか?

もしかすると、岩が砂漠に向かっていったのではなく、砂利が火山を埋めたのではないだろうか?そう考えると、ここの闇夜は単に光がないのではない。突風で巻き起こる砂利の中に火山の噴火によってもたらされた岩石鉱物が混ざっているように思える。

高温で鉱物が豊かな火口は、確かにドラゴンが好んで住みつきそうな場所だ…
オアシスの中の檻
アルバートのノート
風よけの岩壁を抜け、ついにイチ族の集落にたどり着いた。当初、集落のあちこちに武器が並べられているのを見かけたが、強さを貴ぶイチ族なら不思議ではないと思った。何しろ、砂漠の中での暮らしは楽ではないのだから。

しかし、奥へ入るにつれ、通りに数多くの檻が現れた。この時、イチ族は古くから捕虜を人前で見せる習慣を受け継いでいるのだろうと考えた。檻の中に囚われているイチ人を見るまでは…彼らはずっと国王を罵っていた。

ここでは内乱が起きているようだが、私の旅の目的は最後のドラゴンの行方を見つけることだ。いずれかの陣営に加わることは冒険家アルバートの任務ではない。勇敢な冒険家と冒険する勇者との違い…前者は旅の途中で厄介事に口をはさむのを良しとしない。
獅子心王の勅諭
ライオンハートを守る
トルテア・ナソ:

予言の子が聖地に赴こうとしている。反乱軍を食い止めなければならない。

個人的感情に判断を鈍らされてはいけないし、お前の古き家の名に泥を塗ってもいけない。

太陽の末裔は軟弱な慈悲などに惑わされない。お前に対しても、エスに対してもだ。
書記官の私的な歴史書イチ族の新リーダー、獅子心王メネク。この若き国王は砂漠で古い記録をいくつか見つけ、それを使って静寂に陥った土地に光を取り戻そうと考えた。彼は、古代イチが人工太陽を作る技術を持っていたことを示す記録に違いないと確信していた。砂漠からさらに多くのものを発掘し、祖先たちが本当に人工太陽を空に打ち上げ、古代イチにまぶしく、贅沢で、いつまでも続くかのような昼をもたらしたことを証明しようとした。

…極夜に生まれた民には、新しい王の空虚な理想を信じることができなかった。若い国王が従来の制度に対抗し、誰が国により多く貢献できるかを競いたいと考えたことから、発展期が始まった。

……

大量の金が次々に中陸に運ばれ、代わりに中陸皇帝が許可した「エンバーマシン」を手に入れた。この土地の未来を維持するため、時間、空間、労力のすべてがサンドライトの建設に投じられた。すべての人が光を見て喜び、「獅子心王の名は砂漠で滅びることなく、一生そばにいる」という言葉を耳にした。

……

サンドライトがもたらす光は、獅子心王の野望を満たすには足りなくなっていた。その謎の女性は「太陽を手に入れることができるなら、どうして小さなライトにこだわるのでしょう?」と忠告した。彼女は我々の古い伝説から出てきた予言の子だと名乗り、獅子心王が太陽を取り戻した証しとして、災いが訪れるだろうと予言した。

……

獅子心王は、「私は太陽の力を拒まない。予言にあることは、すべてすでに起こっている」と言った。そして、度重なる徴兵、イチの集落の封鎖、「黄金条約」の破棄、サンドライトの撤去を行った…次々と的中する予言――イチ族の内乱と外からの脅威に抗おうとした。しかし、謙虚な歴史家としては、最初からこうした予言がされていなかったら、それらはここまで正確に次々と起こっただろうかと考えざるを得ない。

…彼の名を呼ぶ臣民は彼に背を向け、獅子心王の名は次第にイカれた王の名にとって代わられていった。彼は時々、鏡を見ては石になったように固まる。鏡の中で、何か自分が忘れてしまったものを見ているかのようだ。姫君が旅立った日、彼は鏡を粉々に叩き割った。

……
聖地パトロール日誌聖地パトロール日誌 2284

今日のパトロールはとても平和で、暗い極夜の中、予期せぬ事件は起きなかった。

今日から天気と日付の記録は省略することにする。理由は以下の通りだ。

1つ目、果てしなく続く極夜にとって、昨日と今日に何の違いもない。

2つ目、隊長以外にパトロール日誌を確認する者はいない。

3つ目、私が隊長だ。

……

聖地パトロール日誌 3029

今日のパトロールはとても平和で、暗い極夜の中、予期せぬ事件は起きなかった。

……

聖地パトロール日誌 3693

今日のパトロールはとても平和で、暗い極夜の中、予期せぬ事件は起きなかった。

どんな予期せぬ事件が起こり得るのだろうか?予言の子が奇跡のように現れることを期待しているのか?それとも暴徒が押し入ってメチャクチャにすることを期待しているのだろうか?私の家は祖父の祖父の代より、聖地の番人を務めているが、誰も聖地が開かれるところを見たことがない。私の孫の孫が見られるかどうかも分からない。あるいは神子が試練をパスすれば、他の人もその後に続いて見ることができるのだろうか?

……

聖地パトロール日誌

塀の陰にコソコソしている2人組が隠れていた。まるで岩肌に影を貼り付けているかのようだった。間違いなく「神子様」という言葉を聞いたのだが、私がそばに寄ってみると誰もいなかった。まさか私はついに幻覚を見るようになってしまったのだろうか?

……

聖地パトロール日誌

今日のパトロールはとても平和で、暗い極夜の中、予期せぬ事件は起きなかった。

私が怪しい人影を見た日から、日付を書かないことが賢明な選択だとますます思うようになった。最近はナンバリングも止めることにした。以前、中陸の小説で読んだのだが、山の中の宿で長く暮らしていた作家は、日記の日付が混乱して自己懐疑に陥ったそうだ。しかし、賢明な私はそのようなリスクをとっくに排除している。ハハハ。

……

聖地パトロール日誌 1

……

聖地パトロール日誌 1

今日、知らせが届いた。知らない人に会うのはいつ以来だろう?知らせを届けた者によると、明日は重要な日だそうだ。予言の子のことだろうか?それとも獅子心王のことだろうか?――くわばら、くわばら、今も皇帝はあの人なのだろうか?いずれにせよ、少し片づけなければならない。ほら、パトロール日誌に再び番号を付け始めた。これは良い兆候ではないか?ただ、正確な日付はよく覚えていない。
聖地の伝説この古代部族の末裔たちは、彼らの中からいずれ予言の子が生まれ、その伝説の人物だけがこの地の試練を乗り越え、その後ろにある秘密を解き明かせると信じている。私はあらゆる古代の文化的伝統や民族のタブーを尊重したいと思っているが、ここには世界最後のドラゴンに関する手掛かりが残されている可能性が高いと言わざるを得ない。厳密な科学的精神と飽くなき知的好奇心にしたがい、私にはこの聖地に足を踏み入れる責任と義務がある。もちろん、私は試練を乗り越えられる予言の子ではないが、冒険家アルバートが禁忌の場所に入るのは、ここが初めてではない。入る方法については、1つしか教えられない。ドワーフのシャベルはどんなワンドにも負けないということだ。
ラクーマ古城に関する考察
アルバートのノート
「聖地から入ると、黄金に覆われた古城があった。世界でこれほど大量の黄金を融かせるエネルギーを持っているのは、巨大なドラゴンの息くらいではないだろうか。

前に進み続けると、古城のあるエインヘリャルの背骨で、挑戦者の物語が繰り返し演じられていることに気づいた。しかし、彼らを倒すことは永遠にできないだろうし、彼らに勝っても勝利とやらは手に入れられないだろうという予感がした。ただ彼らに融け込み、ここと一体化するしかないのだ。長い回廊や広場の廃墟を抜け、この地で1000年も死んでいたものを再び倒し、金が敷き詰められた床の隅々にまで自分の名前を刻むことはできる。しかし、その統治はこの廃墟の崩れた表層にすぎないのだ。

一体何が黄金を融かし、ここに閉じこめたのだろうか?ドラゴンと関係がある気がしてならない」
読み終わると切なくなる「家族への手紙」
アルバートのノート
手紙を拾った。

「バルビヌス閣下。どう返事を書いていいのか分かりません。書き始めることすらできない私にどのような答えを期待しているのでしょうか?私たちが池の周りに腰掛け、自分の子ども時代、夢、そして不幸な思い出を話すことでしょうか?それとも、私と母を捨てて10年以上も経ってから、私に『父上』と呼んでもらいたいのですか?以前は『十分な力を手にしたら、そしたら…』と思っていました。しかし、1回、また1回と敗北を続けた私は『復讐を果たしたら、そしたら…』と思うようになりました。今、サンコロシアムに入るチャンスが巡ってきており、名をあげる日もすぐそこです。

沈まぬ太陽が内城を照らし、空気は乾燥し、すべてが新しくなっています。先ほど終わった戦いの勝利の余韻に浸る中、私はかつて剣を手にした日のように自信に満ち溢れ、人生をやり直すことにしました。私はまもなく女王に謁見することでしょう。そして、残りの人生は、もう私生児の悪名に悩まされることはないでしょう」

(しかし、知っての通り、天災のせいで彼の夢はあと一歩のところで潰えてしまう)
コロシアムの崩れた塀に貼られた公示
アルバートのノート
機能は似ているが、構造がまったく異なる2つのコロシアムに興味を持った。古跡を数日にわたって訪ねまわったが、崩れた塀に貼られた公示に数行の文字があったので、次の通り書き写す。「ムーンロードの格闘において、大胆にも下劣な技を使う剣闘士が見られる。勝利は貴いが、女王の法規と格闘技の観賞性を損なう行為は決して許されるものではない。そこで偉大なる女王の許可を得て、規則に縛られず、優劣をつけるのみのコロシアム――スターロードを開設することとなった。手段を選ばず戦いたいという剣闘士は、ここでいつでも好きなように戦うことができる」
剣闘士の手紙お母さんへ

別れを告げずに家を出る息子をお許しください。

ムーンロードで失敗し、悔しさと恥ずかしさを感じています。叔父のジェラルドのように優勝者になるどころか、私は一族の誇りに泥を塗ってしまったのです。しかし、私は決して軟弱者ではありません。必ずスターロードで雪辱を果たしてみせます。そこで生き残り、女王謁見の栄誉を与えられる者がいたとしたら、それはきっとあなたの息子です。

ここでは手紙を届けてくれる郵便屋がおらず、秩序とサービスというものがないのかと疑います。でも心配しないでください。女王に謁見できる日が来たら、女王の祝福のキスを添えたこの手紙を送り、輝かしい栄誉をお母さんと分かち合います。
貴族剣闘士の手紙「これを愉悦といってもいいだろう…たとえ胸がざわついたとしても。鋭い刃先を相手の喉に突きつけ、その皮膚を切り裂き、しまいには八つ裂きにした。その血が私の手を伝ってしたたり落ちていき、その感覚に身の毛がよだちながらも、なぜかこの上ない愉悦を感じるのだ…」
サンコロシアムの建物に関する考察
アルバートのノート
古代イチは明日にでも死ぬかのようなその日暮らしを送る一方、永遠に生き続けるかのように建物の建設に勤しんでもいた。この豪華なコロシアムはそのような矛盾を体現している。壁、天井、柱にはすべて黄金が用いられているが、その土台の隅々にまで血が染み込んでいる。

しかしながら、世界とは実に不条理なもので、女王とその臣民たちは人工太陽を空に掲げ、昼を固定するかのように喜びの時を永続させようとした。ところが結局、太陽は堕ちた。黄金を積み重ねたコロシアムは四方八方に溶けだし、誰もが黄金を流しこまれた琥珀へと姿を変え、一瞬で全てが凝固した。彼らが最も渇望していたものは、最後の悲劇を作り出した。現在も時折、燃え滾る金が地底から噴出し、この地で慟哭する亡者の魂を洗い流している。
アビス以下
アルバートのノート
「遺跡の探索は思いのほか時間がかかってしまっている。この古い宮殿の造りはとても壮大だが、その謎が少しばかり解けたような気がした。奥へ入っていく途中にいくつかの池があり、池の水はやや温かかった。きっとこの下に天然の温泉があるのだろう。火山岩、太陽のように大量の黄金を融かせるほどの熱量、そして目の前の天然温泉…深淵の下には火山が眠っていると断定してもよさそうだ。このまま下へ進み確認しようと思う。世界最後のドラゴンの住みかがそこにあるかもしれない」
イチの皇后に関する考察
アルバートのノート
これは女王を称える詩に関する研究である。

「パローマはパルタタル川に流された捨て子で、乳を飲むよりも先に大河の洗礼を受けていたかもしれない。古代イチ人は彼女の美しさを自然のものだと思っていた。王城には女王の彫像が数多くあるが、彼女は華美な服装を好まないらしく、黄金でわずかな装飾を施す程度だ。台座には『輝く太陽の光が体を覆ってくれる』という彼女の言葉が彫られている」

さらに、本には数えきれないほどの賛美の詩が引用されている。彼女の美貌について、三色の瞳、口元のカーブ、さらには創作のインスピレーションを与えてくれるまつ毛の数に至るまで、事細かに生き生きと書かれている。古代イチ人はパローマの体に多くの美を見出していた――

美に溺れる者は、欲望にまみれ、魂を奪う美しさをその体に見ることができる。

権力を貴ぶ者は、比類なき、そして到達できない美しさをその仕草に見ることができる。

殺戮に溺れる者は、容赦のない、氷のように冷たい美しさをその表情に見ることができる。

女王は美しさのために彫られた彫像のようだが、数多くの賛美に目を通していると、さまざまな形を持つ美しさにもかかわらず、優しさと愛だけが欠けているように思われる。
古代イチ王庭の秘密
アルバートのノート
古城が今まさに目覚めんとしている。無数の影が立ち上がり太陽を賛美するのを見た。これらの影の形や習性には、ドラゴンを思わせるような特徴が残されている。かつて、巨大竜が古代イチの人工太陽に引き寄せられ、そのまま空に昇り、息を吐いて太陽を融かしたと考えられる。この巨大な熱エネルギーは連鎖反応を起こし、古代イチ城の地底に眠っていた火山をも噴火させたのだ。こうして、黄金で建てられた古城は民を呑み込んだだけでなく、巨大竜をも道連れにして地底へと沈んでいった。

一方、深淵の下では、火山洞窟と巨大竜の亡骸が天然の温床となって新たな命を誕生させる。バラバラになった肉体が巨大竜の怨念によって孵化し、成長を始めた。これらの不完全な命は影の中から生まれ、死後は泥となる。自分の同族を食らうことで自身をより強くし、再び新たな成長サイクルを始める。そして今、数千、数万もの巨大竜の子孫が深淵の外へ出て、再びこの世界に戻ろうと津波のように押し寄せてきている。
堕落エインヘリャルの遺書かつての黄金の城内の華やかさを今でも覚えている。信徒は女王の王宮を訪れ、彼女の彫像のつま先にキスし、自分の藁のような運命に女王が触れてくれるよう祈っていた。あの日、巨大竜が永遠の太陽に上り、空には昼と夜の区別がなくなった。鮮やかな夕暮れを残し、死にゆく人工太陽は竜の息で燃やされ、徐々に永遠の形を失っていった。その時、翼の生えた鳥が空から雨のように降りそそぎ、地上では二本足の人間と四本足の獣が逃げ回った。そこに燃え滾る金が流れ込み、すべてを金の像に変えてしまった。

同じく黄金に包まれた巨大竜は深淵へと落ちたが、死んだわけではなかった。千年にわたって恨みを鎮めることなく、その体の中にある強大な力は常に束縛を突き破り、再び光の下へ姿を表そうとしていた。千年もの間、女王のために戦うという永遠の信念が、私と無数のイチの戦士の魂を生かし続けている。そして今でも、深淵の境界を守り、竜の亡骸から生まれた影の末裔と戦っている。

今、女王はあの世から戻り、再び永遠の太陽が空に掲げられた。しかし、私はかつてのような光の力を得られていない。その光はもはや純粋な金色ではなく、我々の石を腐敗させるような不純物が紛れている。それどころか、この影の末裔たちはそこから何らかの力を得ている。

最初、我々は邪竜の影の末裔と戦い、次に同胞たちと戦い、最後には自分の意志の腐敗と戦った。自ら命を断って自分の意志を示すことすらできない。私がこれを書いたのは、これを読んでくれる人にそのことを分かってもらいたかったからだ。死んでから千年も経つ魂なのに、どうやって死からの解放を期待すればいいのだろう?これは戦いではない。戦場には敵もいなければ、戦利品も流血も栄光もない。ただ過去から来た影、そして我らが果てしなく酷使されている永遠があるだけだ。今この瞬間、目を閉じて、もう一度開いた時には饗宴の夢から覚めていたいとどれだけ願ったことだろう。これは果てしなく続く狂喜、無限の喜びなのだ…
女王の部屋
アルバートのノート
「ドラゴンの行方を追い、コロシアムからここまでやって来た。途中、幸いにも書物の一部、壁画や織物から、古代イチの過去を垣間見ることができた。そして、女王の部屋にあった金の像と鏡が私の推測を裏付けてくれた。この物語は恋愛に近い主題なので、比喩や連想を織り交ぜたロマンチックなレトリックを試してみることにした。

まさに熱いランプほど、蛾は夢中になって飛び込んでくるのと同じだ。パローマがいかに残虐非道でも、その美貌に溺れ寵愛を望む者はいた。ナソ家の長男、ジェラルドは、黄金城の中心にある最大のコロシアムへ行き、自らの肉体で野獣と戦うことにした。最終的に、彼は野獣の首を引き裂き、コロシアムの頂点に立ち、空に向かって女王への愛を訴えた。女王は純金の寝室に彼を招き入れた。無数の鏡によって屈折する光の中、ジェラルドは無数の女王、そして彼女の下にひれ伏す無数の自分を目にしたことだろう。

哀れなジェラルドは、おそらく夢にまで見た完璧な容姿を前に、自分の考え、執着、愛、女王に与えたいすべてを語ったことだろう。

女王は何らかの方法で彼の燃えるような気持ちに見返りを与えていたのだろう。そうでなければ、野獣の首を引きちぎれるほどの戦士を言いなりにさせることができるだろうか?

私の推測の根拠は、女王のベッドの天蓋の裏にある。そこにはジェラルド・ナソの名が彫られた金の像があった。その顔に浮かぶ恋心は色あせることなく生き生きとしており、熱い黄金が流れ込んだ瞬間のまま時が停止しているかのようだった。そして、その金の像の奥の鏡には、さまざまな姿勢をした無数の金の像が映し出されていた。

最後に、この物語を『恋愛に近い』と言った理由についてだが、ジェラルドの名前の下には1行の言葉が彫られていたのだ――『愛が最も熱い時に死ぬがよい。それでこそ、汝の愛は永遠を見届けられる』

しかし、永遠とは何なのだろうか?『栄枯盛衰』という言葉があるが、一時の栄華を極めた古代イチ文明も、歴史にほとんど痕跡を残していない」